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学習院大学経済学部 川嶋教授特別補講(2006年6月16日)

<概要>
 学習院大学経済学部(東京都豊島区)の川嶋教授のご協力により、同教授が担当されている講義、「NGO活動とボランティア」の特別補講において、「旧ユーゴスラビア交流の輪」による旧ユーゴの現状とボランティア活動の体験談を発表しました。当日は、発表のほか、現地の様子を撮影した写真の展示会や現地特産コーヒーの試飲会も開き、様々な視点から旧ユーゴを知ってもらうイベントを開催しました。


 <発表者感想>

小坂 妙子(学習院大学 文学部 3年)

 私は大学1年生の夏休み(2003年)に1ヶ月間コソボで活動をしました。コソボの小学校を主に訪れ、遊びや日本文化の紹介を通して現地の子どもと交流しました。国際協力に関心があり参加しましたが、「技術も力もない自分が行っても何もできないけれど、ただコソボが見たい」という思いの方が強くありました。しかし、現地の人々と接するうちに、「コソボを忘れない事、伝える事が自分にはできる」と思うようになりました。(ここから活動中に録画していたビデオを上映しながら、現地の様子を解説)
 「正直想像していたほど酷くない」というのが最初の印象でした。人々は普通に暮らしていました。しかし、建物の1階部分ではお店があって普通に営業していても、2階や3階部分は破壊されて壁と柱のみのままであったり、停電や断水が断続的に起こったり、至る所にあるお墓には絶える事なくお花が飾られていたり、日常の生活の中にも紛争の傷跡は色濃く残っていました。
 現地の方に言われた言葉であり、私からも伝えたいことがあります。コソボを忘れないで下さい。紛争が終結してもそこで全てが解決したわけではありません。人々は今もそこに様々な問題を抱えたまま暮らしています。そして、私はコソボが好きなので、皆さんにもぜひ近い将来コソボを訪れてほしいと思います。


丸井 絵里子(学習院大学 法学部 4年)

 2003年の夏、旧ユーゴで活動する日本のNGOのプログラムでセルビア・モンテネグロの首都ベオグラードに1ヶ月間滞在し、ベオグラード近郊の4つのセルビア人難民キャンプと1つの現地NGOで活動を行いました。現地を自分の目で見たかったため、このプログラムに参加しました。
 難民キャンプの住人は、コソボ出身のセルビア人でIDP(国内避難民)と呼ばれています。プレハブの建物などに住んでおり、政府からの援助の減少、水道、電気設備の未整備といった多くの問題を抱えています。カフェが並ぶ華やかな中心街とのギャップに驚きました。現地NGOというのは、セルビア人難民への援助を目的につくられた団体で、現在は障害を持つ子どもなどを対象にしたワークショップも行っています。
 活動内容は「子どもと遊ぶ」ことです。折り紙のような日本文化紹介、なわとび、お面づくりなどを行いました。子どももその親も訪問をいつも楽しみにしてくれていました。活動や人々との交流を通し、秀でたものがない私でも「自分が活動を通して見聞きしたこと、感じたことを自分の言葉で伝える」ことができると気付きました。


関 能徳(早稲田大学大学院 政治学研究科 修士2年)

 私は2005年の3月にセルビア・モンテネグロとマケドニアを訪れました。マケドニアでの活動について報告させていただきます。この国で少数民族であるアルバニア系住民の子どもたちが通う小学校で、私たちは主に活動しました。他には、同様に少数民族であるロマ系の人々を支援するNGOやセルビア系住民が居住する難民キャンプでも活動を行いました。活動内容は、日本を紹介することを通して特に子どもたちと交流することでした。
 この国が抱える問題は2つあります。民族紛争の傷と貧困です。この国での紛争は他のユーゴ地域での紛争に比べれば穏便に終息を迎えましたが、マケドニアは同時にこの地域でも最も貧しい国の1つです。そこで私たちの活動の目的は、この2つの問題に対して自分たちなりにアプローチすることとなりました。紛争の傷については、全く異なる文化、習慣や言語を有する日本人と楽しい時間を過ごすことで、異民族が害悪ではないことを知る機会をもたらしつつ、同時に紛争という負の記憶に楽しく遊んだ思い出を上書きしたいということがありました。貧困については、折り紙など現地の子どもたちがまったく触れたこともないものを通して、新しい知への扉を開くことがありました。ある小学校の先生が活動終了後に私たちに投げかけた一言が非常に印象的でした。「ごらん。子どもたちは能力がないわけではない。その能力を発揮するためのものがないだけなんだ。」
 国際協力とはボランティア活動がすべてではないでしょうが、思い悩む前にまず活動に参加してみて、活動を行いながらその意味を考えることもまた大切だと感じました。

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